子どもが描く・描きながら語る
2023-07-11
子どもが絵を描く。園でも家庭でも、『描く』というのは子どもの大好きな遊びの一つです。
紙にペンをはしらせる時、「○○を描きたい」という目的をもって描き始めることもあれば、その時はまだ何を描くのか決まらないまま描き始めることもあります。
決まっていたとしても、最初の一筆が思ったようにはいかず、その思いもかけない線からどんどんイメージが変わり、つながり、ふくらみ、物語りが始まることもあります。その方が多いかもしれません。そんな時は、「手」と「線」と「頭」自分の中のイメージと、自分の身体である手が、そこに表れる表現を通して対話を始めているのだと思います。
0~2歳くらいの殴り書きにはそれがよく表れています。自分の「手」が描いた線から感じ、その線・点から新たなイメージを表現し始めます。時には立ち上がり、全身を使って自分の線と対話していきます。
さらに、言葉を獲得した子は、描きながら語り、いったん口から出た言葉からまたイメージが広がり、手と口と内面とで対話をしながら自分を表現しています。
そして描き終わった後も、その絵について語ることでまた自分の世界観が作られていきます。
【Iさんの絵】
I 「これは玄関からよーいドンしてるところ。これは爪」
先生「あ、じゃあこれは手?」
I 「ぱちぱちしてる手。これはぱちぱちしてる音。これは汗。走って「はぁはぁ」って疲れて、疲れたーって顔になってる。」
「でも(ぱちぱちしてくれて)また元気になって笑うの」
彼女は最初からこの思いを持って描いたのかもしれませんし、もしかすると「走る人」と「拍手する人」をよくあるセット・状況として描いたのかもしれません。しかし自分の絵について語ることで、「応援してくれる人がいるんだ」という世界に対する希望、「応援されることって嬉しいね、笑顔になるよね」、という世界と自分の関係を、自分の絵を語ることで発見し直し、再確認している、そのようにも読み取れます。
「子どもが絵を描く」とは、例えばこうした物語りを含んでいるのだと感じます。ぜひ、子どもの物語に聴き入ってみてください。