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世界を見る視点(ある冬の思い出)

2025-02-07
2月7日現在、まだまだ雪が降り続いていますね。大人にとっては厄介ものでも、子ども達は大喜び。園庭には雪だるまを作ろうとした痕跡が迷路のようにでき、池の周りでは子ども達がスコップで氷を割ろうと一所懸命。何が子ども達をそんなに引き付けるのか?それはまたじっくり考えてみることにして、毎年この時期、池に氷が張る度に思い出すエピソードがあります。
7年前、私が担当していたクラスにS君(4歳児)という子がいました。当時彼は遊びの中で「強さ」「色」「音」を探求していました。中でも「強さ」に関しては、生活のいろんな場面で試したり、試した結果を自分の学びにしていく姿がありました。
例えば木工でいろんなものを作りながら、「テープよりボンドが強い」「ボンドより釘が強い」と制作の技術を増やしていき、最後には「釘よりネジが強い」と、自分でキリで穴をあけ、ドライバーを使って制作するようにもなりました。またのこぎりで木を切りながら、「この木より、こっち木の方が強い」「ここ(節)は他の所より強い」と、木の種類や部位による違いも感じ取っていきました。「強さ」とは彼にとって「生活の価値」であり、世界を見る視点の一つでした。

7年前のその日もかなり冷え込み、園庭の池には厚い氷が張っていました。
さて、S君は当然の如く、その氷がどのくらい強いのか確かめたくなったようです。彼は(想像のついた方もあると思いますが)はらはらしながら見守る私をしり目に、池にかかっている橋から氷の上に片足を、慎重にもう片足を置き、最後には橋からそっと手を放し完全に氷の上に立ちあがり…驚いたような表情で「氷の方が僕より強い!」と宣言したのです。が、その瞬間足元の氷が割れ、彼の下半身は池の中に落ちてしまいました。私は慌てて助け上げながら、そんな状況の中で彼が満足そうにつぶやくのを確かに聞いたのです。「僕の方が強かった…」と。

人は、それぞれが探求している視点(それぞれにとっての生活の価値)をもって世界を見、参加し、働きかけています。同じ時代に生き、同じ園で過ごし、同じ方向を見ていても、それぞれの子どもによって、世界の見え方、感じ方は違っているのです。そのことはつまり、表現も・学び方も、やはりそれぞれの世界があるということです。
2月16日から開催の「みんなの生活アート展」では、そうした子どもたち一人ひとりの見ている世界、学び、探求のプロセス・表現を展示します。その子が世界をどうとらえているのか?それぞれの「私にとっての〇〇」を、ぜひご一緒に感じてみて下さい。
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