言葉のプレゼント(2023年12月園だより)
2024-11-14
今年もいよいよ12月、寒くなったり温かくなったり変な天候が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、今月各クラスの保育参加が行われますが、先だっておひさま組の保育参加がありました。始まる前、マラカスで遊んでいた子どもが、その楽しさを共有したかったのでしょうか、別の保護者さんにマラカスを持って行って「どうぞ」というふうに渡してあげていました。その場の皆さん、ほんわかと和んだ一場面ですが、「何でも自分の!」が子どもの特徴かと思いきや、実は彼・彼女たちは、こんなに小さい時から「贈りたがり」なんですね。
「人と人との関係は『贈与』から始まる」と、唱えた哲学者がいます。難しい言い方ですが、要は「人はいつの間にか他者から返しきれないほどの贈り物をもらっていて、そのため(無自覚に)その借りを返さずにはいられない。それが人間関係の基礎となっている」だそうです。
生まれてきた赤ちゃんは自分一人では何もできず、いつもそばにいる大人から、たくさんの贈り物(食事や、温かい環境・やさしい声かけ、スキンシップ等々)をもらっています。そして人間は(心理的に)もらっただけのものは返さずにはいられない存在らしい。そうして子どもは親からもらった分を、周りの人に対して返していく(「『借りた人に』じゃなくても、他の人に返してもいい」というのが興味深いところ)。これが他者と関わっていく動機になっている…というのです。
人との関係を「借り」で表すのは味気ない気もしますが、モノや食べ物だけじゃなく、親から子どもにかける言葉の一つ一つが、子どもにとっては(その言葉の意味が分かる前から)かけがえのない贈りものとなって、その子の中に溜まっている…というのは素敵な考えですね。
中には我が子に対して、どう語り掛けたらいいのか困ってしまう(私のような)お父さんもおられるかもしれません。でも、そんなに難しく考えず、「おはよう」「ありがとう」「可愛いねー」の一言はもちろん、例えばオムツを変える時でも「濡れて気持ち悪いからオムツ替えようか」「はい、足上げて」「おしり拭くよー」等々。そういった言葉かけも、大好きなお母さん・お父さんが私だけに向けて話しかけてくれている…という贈りものになっているのかもしれません。
一方で大人側も、子どもからたくさんの贈り物をもらっていますね(子どもは3歳までに一生分の親孝行を済ましている、とよく言われますが)。私も、園にいる子どもたちから笑顔、驚きの探求心、隠しきれない他者への優しさ、斜め上行くファンタジー、その子唯一無二の感じ方や表現等々…、そういった姿と出会うたび、また返しきれない負債を負って途方に暮れてしまいます。
